万夜一夜物語

万夜一夜物語(よろずやいちやものがたり) 自分の思考や気持ちを整理して記載していくブログです。自分を前に進めるために、残していくために。

映画「ゆれる」を見て弟のことを思う

ものすごく今更ながら映画「ゆれる」をDVDで借りてきて見た。

これはかなり以前、映画館で何かの映画を見ている際に、予告で流れてきて、とても面白そうだと思ったにも関わらず、結局今まで見ずにいた。

 

映画の公開自体は2006年だから、もう8年も前、ちょうど今と同じ5月だそうだ。

 

予告も面白そうだったし、第59回カンヌ国際映画祭に出品しているほか、色々な映画賞も取っているので面白いとは思ったが、案の定引き込まれて集中して見られる映画だった。

 

特に、街で並んで歩いていたら全く兄弟に見えないであろう、オダギリジョー香川照之の演技が素晴らしく、見ていると彼らが実の兄弟であることに全く違和感なく見られる。

そして、彼ら2人のシーンが圧倒的に多く、当然ながら派手なアクションなどがあるわけではないこの映画の完成度は演出もさることながら、この二人に演技によって決まっている、と個人的には考えた。

 

日本アカデミー賞で、優秀主演男優賞オダギリジョーが、優秀助演男優賞を香川照之が受賞したのも頷ける。

 

オダギリジョーなんて、出てきた当初は、名前が何故か片仮名でイケメンだというだけで、ちょっとうさんくさい、と偏見で見ていた自分がアホらしい。カタカナだしイケメンだけど、実力派のいい役者さんだと思う。

 

映画は二人の兄弟の話、橋も揺れるし、心も揺れるし、見ている人の判断もゆれる。

初めは兄思いの弟を軸にしたヒューマンドラマかとおもいきや、それほど単純ではない。

最終的に見ている人の解釈に委ねられる「謎」が浮かび上がり、それは解消されないままエンディングでこれまた素敵な歌が流れる。

 

演技も脚本も素晴らしいので、別に見ている途中に無理に何かを解釈する必要はないと思うが、改めて見終わって考えてみると色々と面白い。

 

事実は何であったのか、オダギリジョーの演じる弟や香川照之の演じる兄の行動はどのような心理からくるものなのか、小さいところだとエンディングの後はどうなるのか?などなどは考えてみると面白い。

 

ちなみに、解釈では「ゆれる」でググった時に出てきた、

ゆれる(おもいっきりネタバレ版^^;): 『ブタネコのトラウマ』 Blog版

の記事はなるほどな、と思った。ネタバレ気味ですが、ご興味のある方は。

 

ラストシーンとかをどうするかは難しいけど、こういうどういう風にも取れる終わり方は結構好きだ。

 

以前映画「ツォツィ」を見た際に、実際のエンディングと、DVD特典として他のパターンのエンディングも複数入っていて、どれも良かったのだが、個人的にはやはり色々な可能性がある方が後が考えられて面白いな、と思う。

素敵な作品であればあるほどそうだと思う。逆に駄作だったら、さくっとはっきり結論をつけて終わって欲しい。

 

とはいえ、いずれにしてもこの映画は「兄弟」の思いを一つのテーマにしていることは間違いない。

 

軸は弟のオダギリジョーに寄り気味ではあるものの、兄も入ってくる。

 

自分は弟がいる兄なのだが、先日GWに実家に帰った際に会った弟のことを考えながら見ていた。果たして自分たち兄弟がこのような境遇におかれたらどのようになるのだろうか・・・

 

改めて優しい弟には幸せになってほしいと思った。

 

普段は洋画を見ることが多いけど、たまにはこういう邦画もいいと思った。

テレビでガンガンCMをうっているようなものはしっくりこないことが多いけど、やっぱり明らかに邦画にも名作はあるはずだし、自分は小説は圧倒的に日本の作家派だから、本来的には合うはず。もう少し邦画を見よう、とも思わせてくれた素敵な作品だった。